舞囃子『葛城・神楽』香川靖嗣・松田弘之・横山晴明・柿原祟志・小寺佐七 謡いも動きも、ゆったりと始まり、「いざや、奏でん」と静まる。「降る雪の」から、しっとりとして綺麗。 舞は神楽の囃子で、常より軽快だが、動きはゆったりとやわらかで、雪の静けさ。次第に力強くなり、神々しい雰囲気に。 「天乃香具山も」と見渡す姿が美しかった。 狂言『花子』茂山千之丞・山本東次郎・茂山あきら 珍しい組み合わせのメンバーだが、とても素晴らしい。 東次郎さんの妻は“しっかりした女”という感じで、さりげなく言いくるめて夫を外に出させない様にしようという雰囲気。 ゆったりした話し方の千之丞さんは言い負かされそうなのを、必死に知恵をしぼって、やっとの事で一晩の座禅をする…ここまででもかなり良い雰囲気。 太郎冠者を呼出して、脅して身代わりにさせる様子もメリハリが有って上手い。 太郎は妻に正体がばれて、心底恐れている感じが出ているし、妻は悔しくて「燃ゆるよう」と体をひねる仕草がかわいい。 小歌を歌いながらご機嫌で帰宅する様子は楽しそうで、太郎と妻が入れ替わってるのを知らず、頭を叩いたり、話を聞かせたりと、ストーリーは分かっているのに“あぁ、やっちゃったよ”と思ってしまう。 座禅衾を無理に取って、妻が入れ替わってると知り、尻餅をつく様に倒れて驚く感じが絶妙。 慌てて言い訳をするもの、「ゆるいてくれい」と逃げて行くのも、必死で、上手く、とても面白かった。 『鉢木』塩津哲生・香川靖嗣・宝生閑・則久英志・山本則孝・山本則直・松田弘之・横山晴明・柿原祟志 ワキ『次第』〜『道行』とテンポは遅くないが、どっしりとして、静か。ツレゆっくりと立ち上がり「誰にてわたり候ぞ」と突然の訪問に不思議そうに対応する感じが自然。 シテはゆっくりと『一ノ松』に出ると「ああ、降ったる雪かな」と僅かな驚きを含みつつ、静に実感する様子。 「それ雪は」と淡々として、「袂も朽ちて」としっとりと綺麗な謡。 「あら曲もなや」とワキは仕方なく諦めた風で出て行くと、ツレは「あさましや」としっかりとする。 「某追っつき」と正先に出ると、ゆっくりと『橋掛リ』を向いて、遠くに声を届けようと一音一音をしっかり届ける感じで、ゆったりと呼び掛け、そのまま遠くから見つめる様に、正先に止まっている。 ワキの動きはほとんど無いが、雪に翻弄されて進めなくなっている様子を、シテと一緒に遠くから見ている気分。 地謡の『下歌』で『橋掛リ』に行くと、「見苦しく候へど」と肩を叩く。ワキはすぐに振り返って『上歌』はさらり。「総じて」から静で、「なう、御覧ぜよ」と少し強くなるが、再び抑えて寒々とした冷気がそっとぬけて行く感じ。 「今も梅松桜を」と淡々としつつも、その心は決まっていて、雪を払って感慨深く見つめるが、枝を切る事に躊躇いはない。 名を問われて、答える様子も謡は静だが「いつか!」という思いを感じ、「これは只今にても」と力強くて、「ちぎれたりとも」や「なんぼう無念の」と迫力が有る。 後はしっかりとした『一セイ』。「常世が常に」と少し抑え「痩せ馬の」と長刀を抱き込む様に持って舞台の方を向く姿が美しい。 「足よわ車の」と『三ノ松』まで下がり足元を鞭で細かく打ちながら常座へ行き、鞭を捨てて、長刀にすがり付く様に立つ姿は痩せ馬でやっと到着した感。 「常世はこれを賜りて」で堂々と、ゆっくり礼をすると、自信に溢れ、「はじめ笑ひし」と見せ付ける様に廻り、「さて」とさらりとして、長刀を取る。 シテは「その中に常世は」としっかりと、地謡はさらりとして「今こそ」と長刀で『差ス』と角を回り『二ノ松』へ、「安堵して」と長刀を横に構え「嬉しかりける」と肩に預けてトメ。 前半から野心的な秘めたる思いを感じる演技で、後の堂々とした雰囲気に合っていてカッコイイ! |
称名寺の橋
2007-09-03 04:32今となっては、この、橋の上からの写真は貴重かも。
『六浦』に登場する「青葉楓」は枯れてしまったのですが、紅葉しない「常盤楓」が98年に金堂前に植えられたそうです。
久しく行かないうちに、色々変わった様で、今度見に行ってみよう。