烏帽子・冠・仮髪
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烏帽子

翁烏帽子・立烏帽子 剣先烏帽子 侍烏帽子
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短く立てた烏帽子で白い紐をかけて被る。翁のほかに神職・巫女に使う。 三番叟用の烏帽子。能独自のもので、頂が剣先形になっている。常は黒だが、替用に金もある。 前方にまねぎと呼ばれる三角形がある烏帽子。武家が着用した。紐の掛け方に種類がある。
前折烏帽子 静烏帽子 梨子打烏帽子
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大型の立烏帽子で、前にやや折れ込んだ形をしている。白拍子や女遊芸人が舞を舞うときに使う。又、後ろを折り込んで男遊芸人にも使う。 金色の前折烏帽子で、静御前のみに使われる。 元々は柔らかく作られていて、兜の下に着用したもの。能ではこれに鉢巻をして軍装を示す。頂が右折か左折かで源平の区別が有る。
風折烏帽子  洞烏帽子
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立烏帽子の上部を折り曲げた烏帽子。風に吹かれて折れた様に見えるところからの名称。略式の烏帽子で、狩衣を着る時に使われる事が多い。基本は黒色、身分の高い役は金色を使う(子方の時も)。能では常に左折。 ワキの大臣が被る烏帽子。狂言では大名烏帽子と呼ぶ。






唐冠 透冠 初冠
老懸
唐の冠を模したもので、左右に朴葉型の羽が付いた冠。小は中国の帝王、大は荒神・鬼神などが赤頭・白頭の上に被る。『皇帝』『鵜飼』『嵐山』『賀茂』などのシテ、『東方朔』『張良』のワキなど。 神舞を舞う男神専用の冠。薄物の羅で作った羽が両側に出ている。 天皇・貴人・老神がかぶる黒の薄物、又は紗で作った冠。巾子(コジ)を立て、後ろに短冊形の纓(エイ)をつける。両耳の部分に老懸をつける場合も有る。
天冠 竜戴・龍戴
日輪
輪状の冠で、唐草や雲形の透かし模様が入る。中央には日輪・月輪・鳳凰・白蓮・蝶・蔦紅葉などを立て、左右に瓔珞を垂らす。天女・精霊・官女など。『羽衣』『胡蝶』『藤』『葛城』『楊貴妃』のシテ、『絵馬』『恋重荷』のツレなど。 輪冠(天冠の装飾を取ったもの)の上に、皮を切り抜いて竜を模り彩色して立てたもの。竜神の役に用いる。
輪冠
天冠の瓔珞が無い物。中央にはその曲を象徴する鷺・胡蝶・蓮華・牡丹・竜・狐などを立てる。 『鶴亀』に用いる鶴と亀の冠。





その他


鳥兜 兜巾 大兜巾
頂が前方に尖り、しころが後ろに飛び出した形。鳳凰の頭をかたどったとされ、錦で出来ている。楽人・伶人の被り物。『梅枝』『大社』『道明寺』『富士太鼓』のシテに用いる。 山伏の被り物。無明煩悩を示す黒布で作られる。大日如来の五智宝冠を象徴する低い円柱に、十二因縁にちなんだ12のヒダをつける。山中の毒気にふれるのを防ぐという。 天狗役に使う兜巾で、金襴地で兜巾より大形に作られていて、赤頭の上につける。
角帽子 沙門帽子
僧侶の役がかぶる頭巾の一種。紺、茶などの無地の緞子で出来ていて、頭部を三角形に尖らせ、後ろに長く垂らし、平紐で後頭部に結ぶ。ワキ・ワキツレの僧役や『熊坂』の前シテ、『景清』『俊寛』に用いる。 角帽子を折り込んで短く着る形で、布は金襴を使う。高僧の役に使われる。





仮髪鬘・頭・垂の総称。かつらの事

女性役の仮髪で、黒髪を左右に分け、耳を隠す様に後ろに流し、元結で結ぶ。
その上に鬘帯をして、面をかける。特に長い物を長鬘<ナガカズラ>と言い、天人や狂女に用いる。
更に長いかもじを垂らしたものを長髢<ナガカモジ>と言い、『葵上』の小書「空之祈」に用いる。
鬘の毛の一部を前に垂らしたものを付髪<ツケガミ>、又は乱髪<ミダレガミ>と言い、『蝉丸』・『玉葛』のシテに用いる。
姥鬘 老女の鬘で、色は白又はごましお。
渇食鬘 男役の鬘で、後ろを長くして結び、鬘帯をしない。
尉髪 老人の鬘。大きな髷で、髻の先が面の額にかかる。色は黄ばんだ白。

(赤・黒・白)
前髪を下ろし、横は肩、後ろは身長ほどの長い仮髪。
色が3色あり、役柄によって使い分ける。多くの場合、赤は神・竜神・天狗などに用い、特に2本の金無地扇をつけたものを獅子頭と言う。黒は童子・慈童・怨霊などで、これに金具の鍬形をつけて武将の幽霊にも用いる。白は老体・神霊・鬼畜などで、赤・黒より威力の有る年の功をつんだ者を表す(ただし喜多流の山姥は常に白頭なので例外)。
演出によって変わる事も有り、そのまま小書名として、赤頭・黒頭・白頭と表記する。

(黒・白)
肩下まで垂らした仮髪。「頭」より短く、髪の量も少ない、髪裾が揃っている。
黒は「高砂」「田村」の後シテや男の神、天女や狂女にも用いる。白は「実盛」の後シテ、「西行桜」、『鷺』、『鶴亀』の亀役などに用いる。


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